小型スマート油圧アクチュエータ:Part1
1950年William C. Moog氏により開発されたノズルフラッパタイプのサーボ弁(図1)は,その後現在のサーボ弁と同様な形となり,50年以上経った現在でも基本的な原理は変わらず,様々な分野で活躍している。
図1 1950年のサーボ弁とUS特許書類
スマートアクチュエータの概要
過去20年ほどの間に電動モータ・電動アクチュエータの参入により,装置の中で油圧=高出力・大型,電動=低~中出力・小型というような棲み分けができた印象を受ける。
しかしながら,近年,様々な用途の自動化の中で,電動ではサイズに対する出力不足や,耐環境性能の問題から,油圧のもつ「高パワー密度」,「耐環境性」及び「しなやかな力・トルク特性」を備えた小型の油圧制御製品の需要が増加してきている。
そのような状況の中,数年前,イタリアの研究機関から,4足モビリティロボットの足関節向けの「小型スマート油圧アクチュエータ」の開発の依頼を受け,金属プリンタで成形された小型軽量ボディに,小型サーボ弁,油圧シリンダ,位置・圧力センサ及び通信機能を持つ制御基板が1つになった電動油圧式スマートアクチュエータ「ISA(インテグレーテッド・スマート・アクチュエータ)」(図2)を完成させた。(直訳すると,「(多機能が)統合されたスマートなアクチュエータ」という意味である.)
図2 インテグレーテッド・スマート・アクチュエータ
ISAの特長
- ピストン径: 21.5㎜
- ロッド径: 12㎜
- ストローク長: 100㎜
- 最大出力: 7,500 N @ 21 MPa
- 最大速度@66%最大出力時: 264 mm/sec
- 全長(最縮時取付間長): 295㎜
- 本体金属素材: チタン
- 質量: 1.6kg
- 通信:CANopenまたはEtherCAT
「スマート」と呼ぶ最大の理由は,内蔵された位置センサ,圧力センサ及び制御基板により,クローズドループ制御を内部で構築でき,さらにCANopenまたはEtherCATによる上位コントローラとのリアルタイム通信機能を備えているからである.油圧アクチュエータの制御システムに必要となるサーボ弁,油圧シリンダ,センサ及び制御装置を小型なボディに全て内蔵し,上位コントローラとの通信により,アクチュエータの制御や内部パラメータの設定が可能な小型でスマートな油圧アクチュエータである。
Part2では,このような「小型スマート油圧アクチュエータ」が開発可能になった背景と現在の課題,そして将来の展望を紹介する。
「小型スマート油圧アクチュエータ:Part2」へ、つづく。
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