お問合せ・ご相談

0120-609-141

【受付時間】午前10時〜午後6時(平日)

技術コラム
基礎知識

電動・油圧ハイブリッド型アクチュエータ:Part1 航空宇宙分野の実績

世界的に高エネルギ効率やクリーンな環境性の要求が高まる中、産業機械の主要な駆動源である従来型の油圧システムは、システム内部リークによるエネルギ効率の問題、外部リークに伴う環境への影響、それを補うための比較的頻繁なメンテナンスの必要性等が課題に挙げられてきた。主要な代替手法として、電気式モータと各種アクチュエーション機構を使用した電動システムが採用され適用範囲は広がってきたが、電動システムも、絶対出力の限界や、電気式モータの特性上、連続的な出力維持・保持が不得手であること、油圧システムに比べて必要スペースが大きくなる問題といった幾つかの課題がある。本稿では、これら両者の課題を解決する一つの代替ソリューションとして電動機構と油圧機構のハイブリッド型アクチュエータであるEHA(Electro-Hydrostatic Actuator)の可能性を提案させていただく。

EHAシステムの概要

EHAシステムの構造と特徴
 EHAはシリンダ、フィードバックセンサ、可変ポンプ、サーボモータ、モータドライバ、制御装置を一つのパッケージに統合した独立駆動型アクチュエータである。従来の油圧コンポーネントを統合することで、配管、ホースやカップリングといった部品を削減でき、見た目にも従来型油圧システムとは異なる。駆動源は電気式モータと同様の電気的接続のみとなる。
EHAは電気エネルギを、油圧機構を介して機械出力へと変換する。動力電源は、サーボモータにより機械的回転運動へ変換され双方向回転型ポンプにより油圧エネルギへ変換される。同ポンプの2本の出力ポートはシリンダの各油室に接続され、機械出力としてのシリンダの伸縮へ変換される。従来の油圧サーボシステムでは、サーボバルブによる流量制御により制御される最終機械出力が、EHAではサーボモータの回転すなわちそれを駆動する電気エネルギを調整することで実現される。(図1)

EHAは必要なタイミングで必要な出力を発生させることができるため、高エネルギ効率が実現可能となる。これにより、作動油の温度上昇は最小限に抑えることができ、それに伴い、冷却機構も必要最低限とすることができるため、大きさもコンパクトなモジュラーシステムが実現できる。また、温度上昇が少ないことから、従来型油圧システムに比べて作動油の劣化も少なく、作動油交換も長いサイクルとなる。

航空宇宙分野での実績

EHA技術は、航空宇宙分野において2000年初期から採用されている。EHA技術により、翼のフラップや着陸装置、方向舵制御装置への配管が不要となり、それに伴って油圧漏れなどの不具合に対するシステムとしての信頼性の向上が実現されている。現在に至るまで、航空宇宙産業という厳しい基準の中で信頼できるだけの実績が積まれてきている。弊社においても、航空宇宙産業が同技術を採用始めた初期の段階からEHAを供給し、10年以上にわたる経験を経て、2011年に産業機械市場向けのEHAであるElectro-hydrostatic Actuation System(EAS)を上市した。なお、EASは性能、部品構成、油圧回路等、要求に合わせたカスタマイズ可能となっている。(写真1)

 

 

 

 

 

Part2「産業機械分野向けEHAにおける挑戦」へ、つづく。

関連記事

トップに戻る